お釈迦様と蛇霊(4)

○第506話『ウポーサタを守った竜王前生物語』

布薩(ウポーサタ)  在家信者の場合は、毎月(陰暦)6回、八、十四、十五、二十三、二十九、三十日、つまり新月・満月の日とその前日、およびその中間の日に、仕事を休み、八つの戒律をまもり、瞑想を行う。八つの戒律とは、生物を殺さない、盗みをしない、性交をしない、嘘をつかない、酒を飲まない、昼以降は食べない、歌舞音曲を楽しまず、身を飾らない、高い寝台や大きな寝台を使わないこと。

 むかし、アンガ国でアンガ王が、マガダ国でマガダ王が国を治めていたとき、アンガ国とマガダ国の中間にチャンバーという河があった。そこに竜宮があり、チャンペッヤという竜王が統治していた。ある日のこと、マガダ王はアンガ王と戦争したが、戦いに敗れ、馬に乗って逃げた。マガダ王はアンガ王の戦士たちに追われていた。満水のチャンパー河に達し、「敵の手にかかって死ぬより、河に入って死んだほうがましだ」と考え、馬もろとも河に入った。
 そのとき、チャンペッヤ竜王は、水中に宝石をちりばめたホールを作り、大勢のおつきを従えて、大いに酒を飲んでいた。馬は王を乗せて水中に沈み、竜王のまえにおりた。竜王は着飾った王を見て、親愛の情をおこし、座より立って、「大王よ、恐れることはない」と言い、王を自分のソファーにすわらせて、水中に沈んだ原因をたずねた。王は一部始終を語った。すると竜王は、
「大王よ恐れることはない。わたしがあなたを両国の支配者にしてあげよう」となぐさめて、七日間、すばらしい栄誉を享受きょうじゅさせてから、七日目に、マガダ王とともに竜宮から出て行った。マガダ王は竜王の威力によりアンガ王を捕え、その生命を奪い、二つの国において国を治めた。
 それから以後、王と竜王とのあいだの親交はかたくなった。王は毎年チャンパー河の岸に宝石をちりばめたホールを作らせ、莫大な費用をかけて、竜王に供物くもつをささげた。竜王は大勢のおつきのものとともに竜宮から出て、供物を受けとった。大勢の人々が竜王の繁栄をながめていた。
 そのとき、菩薩(前世におけるお釈迦様)は貧しい家に生まれていた。かれは王の会衆とともに河岸に行き、竜王のこのような繁栄を見て欲を出し、その繁栄を望んで、布施ふせをし、戒律を守ったので、チャンペッヤ竜王の死後、七日目に死んで、竜王の宮殿の吉祥の座(王座)のうえに再生した。菩薩の体はジャスミンの花環のように美しく、大きかった。
 かれはそれを見て後悔して、「わたしは以前になした善業の結果として六欲天における主権を倉庫に貯蔵された穀物のように得た。だがわたしは、この畜生(竜)の胎に再生してしまった。わたしにとって生命が何になろう」と死にたい気持ちになった。
 そのとき、スマナーという名の竜の少女がかれを見て、「大威神力をそなえたサッカ(帝釈天)が生まれたのにちがいない」と考え、ほかの竜の少女たちに合図した。少女たちはみな、いろいろの楽器を手にしてやってきて、かれにかしずいた。かれの住む竜宮は帝釈天の宮殿のようになった。そして、死にたい気持ちはやんだ。かれはじゃしんを捨てて、ありとあらゆる装飾品で身を飾りたて、ベッドのうえにすわっていた。かくて、それから以後、かれの名声は高まった。
 菩薩(お釈迦様)はそこで竜の国を治めていたが、あとになって後悔し、「わたしにとって、この畜生界が何になろう。ウポーサタ(布薩)に入り、ここから脱して、人間界に行き、真理を洞察して苦を滅しよう」と考え、それから以後、その同じ宮殿でウポーサタの行為をなした。しかし、飾りたてた竜の少女たちが竜王のそばに行くと、大抵たいていの場合、戒を破った。それから以後、竜王は宮殿から出て、御苑に行った。少女たちもそこに行った。ウポーサタはたちまち破れた。かれは考えた。
「わたしはこれから竜宮を出て、人間界に行き、ウポーサタに入ったほうがよい」と。以後、ウポーサタの日になると、竜王(お釈迦様)は竜宮から出て、ある辺境の村の近くの街道のそばの蟻塚の頂上で、「わたしの皮などを望むものは皮などをとれ。わたしを見せ物のへびにしようと望むものは見せ物の蛇にせよ」と考えて、身体を施物として投げだし、とぐろを巻いて横たわり、ウポーサタに入っていた。街道を行き来する人々は、かれを見て、香などにより供養して通りすぎた。辺境の村に住む人々は、「竜王は大威神力をそなえている」と言って、かれのうえにお堂を作って、一面に砂をしきつめ、香などで供養した。それから以後、人々は竜王(偉大な人=菩薩=お釈迦様の前世)を信仰し供養して、子供を望んだ。竜王(菩薩)のほうは、ウポーサタ行をなしつつ、月の第十四日目と十五日目に、アリ塚の頂上に横たわり、白月の日に竜宮に帰った。かれがこのようにウポーサタをなしているあいだに時がすぎ去った。
 ある日、第一妃のスマナーが言った。
「王さま、あなたは人間界に行ってウポーサタに入っています。しかし、人間界は危険で恐ろしいところです。もしあなたに危険が生じたら、わたしたちはどんな前兆によって知ることができますか。われわれにそれをおっしゃってください」そこで、竜王(偉大な人)は彼女を吉祥の蓮池の岸につれて行き、「妃よ、もしだれかがわたしを打って苦しめるなら、この蓮池の水が濁るでしょう。もしガルダ鳥がわたしを捕えるなら、水がなくなってしまうでしょう。もし蛇使いがわたしを捕えるなら、水は血の色になるでしょう」と、このようにかの女に三つの前兆を告げてから、第十四日目のウポーサタを決意して、かれは竜宮から出て例の場所に行き、アリ塚を輝かせていた。というのは、かれの身体は銀の鎖のように白く、頭は赤い毛糸の球のようであったから。
 ところで、この前生物語においては、竜王(前世のお釈迦様)の身体はすきの柄ほどの大きさであった。「ブーリダッタ前生物語」においては腿ほどの大きさであった。「サンカパーラ前生物語」においては貨物船ほどの大きさであった。そのとき、バーラーナシーに住むあるバラモン青年が、タッカシラーに行き、世に知られた師匠のもとであらゆる感官の対象に関する呪文を学んだのち、その道を通って自分の家へ帰る途中、竜王(お釈迦様)を見て、「この蛇を捕えて、村や町や王都で芸をさせ、財産をつくろう」と考え魔薬をもち、魔法の呪文をとなえて、竜王のそばに行った。魔法の呪文を聞いたときから、竜王(偉大な人)の耳のなかは赤熱の木片が入ったときのようになった。かれの頭は刃で砕かれたかのようになった。竜王(偉大な人)は、
「いったい、彼は何ものか」と、とぐろ巻きのなかから頭をあげて見たところ、蛇使いを見て考えた。「わたしの毒は強力である。もしわたしが怒って鼻から風を出せば、かれの体は一握りの籾殻のように飛び散ることであろう。しかしそうすればわたしの戒も破れることになる。わたしはかれを見るのはよそう」
 竜王(偉大な人)は目を閉じて頭をとぐろ巻きのなかに収めた。蛇使いのバラモンは薬をかみ、呪文を誦して、竜王(偉大な人)の身体に唾を吐いた。薬と呪文の力によって、唾液の触れた部分は、どこも腫物が生じたときのようになった。それから、かれは蛇の尾をもってひっぱり、長く横たわらせて、ヤギの足の杖で押しつけ、力を失わせて、頭をきつくつかんで握りつぶした。竜王(偉大な人)は口を開いた。すると、蛇使いは、その口に唾液を吐き、薬と呪文を用いて歯を折り、口を血でいっぱいにさせた。竜王(偉大な人)は戒を破ることを恐れて、このような苦痛をも忍んで、眼を開いて見ることすらしなかった。
 一方、蛇使いのほうは、「竜王を無力にしてやろう」として、尾からはじめて、かれの骨を粉々に砕くかのように、全身をうちくだいて、ターバンを巻くように巻き、糸を磨くようにこすりつけ、尾をつかんで、布地を打つように打った。竜王(偉大な人)の全身は血にまみれ、かれは非常な苦痛を耐え忍んだ。さて、蛇使いは、かれの弱ったのを知って、蔓草でかごを作り、そこにかれを投げこんで、辺境の村につれて行き、群衆のなかで芸をさせた。群衆は喜んで、いくらでも金を払った。バラモンは、最初、「千〔カハーパナ〕を得たら放してやろう」と考えていたが、その財貨を得たら、
「辺境の村においてさえこれだけの財貨を得たのだから、王や大臣のもとにおいては、もっと多くを得ることができよう」と考えた。そして、荷車と快適な車を手に入れ、荷車に財貨を積み、快適な車にすわって、大勢の従者をつれ、村や町で竜王(偉大な人)に芸をさせながら、「バーラーナシーのウッガセーナ王のもとで芸をさせてから放してやろう」と考えて、そこへ行った。
 蛇使いはかえるを殺して竜王に与えた。竜王は何度も、「かれがわたしのために殺すことのないように」と考え、食べなかった。そこで蛇使いは竜王に甘い穀物を与えた。竜王(偉大な人)は、「もしわたしが餌を食べれば、この籠のなかで死ぬことになろう」と、それすらも食べなかった。
 バラモン(蛇使い)は一ヵ月ほどして、バーラーナシーに到着し、都の入口付近の村々で蛇に芸をさせて、おおくの財貨を得た。王もかれを呼びにやって、「われわれのために芸をさせなさい」と言った。
「かしこまりました、王さま。明日、十五日に、あなたがたのために芸をさせましょう」
 王は、「明日、竜王が王宮の庭で踊るであろう。群衆はあつまってきて見よ」と、太鼓を打たせて触れ歩かせ、翌日、王宮の庭を飾らせて、バラモン(蛇使い)を呼びにやった。バラモンは宝石をちりばめた籠に入れて竜王(偉大な人)をつれてきて、極彩色の敷き物のうえに籠をおいてすわった。王も高楼からおり、大勢の人々に囲まれて王座にすわっていた。バラモンは竜王(偉大な人)をとり出して踊らせた。群衆は平静でいることができなかった。数千の衣服の波立ちがおこった。竜王(菩薩・偉大な人)のうえに七宝の雨が降った。
 かれが捕われているあいだに、一ヵ月が経過した。そのあいだ、かれはまったく食事をしなかった。
 一方、スマナーは、「わたしの愛する夫はあまりにも遅い。かれがここにもどってこなくなってから、もう一ヵ月もたった。いったいどうしたのだろう」と心配して、行って蓮池を見たところ、水が血の色になっているのを見て、「かれは蛇使いに捕われたのにちがいない」と知り、竜宮から出て、アリ塚の付近に行ってみた。そして、竜王(偉大な人)が捕まった場所や苦しめられた場所を見て嘆き悲しんだ。それから、辺境の村へ行き、たずねてみて、その顛末てんまつを聞き、バーラーナシーに行って、王宮の庭で、会衆のなかで、空中に泣きながら立っていた。竜王(偉大な人)は、踊りながら、空中をながめ、彼女を見て、恥じて籠のなかに入り横たわった。王は、かれが籠のなかに入ったとき、
「いったいどうしたことか」と、あちこちをながめたところ、空中に立っているかの女を見て、第一の詩をとなえた。
『稲妻のように輝き、明星みょうじょうのように輝いているあなたはだれか。あなたは神か。あるいはガンダルヴァ(半神の一種)の女か。わたしはあなたが人間であるとは思わない。』
以下、両者のあいだに、つぎのような対話の詩が交わされた。
竜女『大王さま、わたしは女神でもガンダルヴァの女でも、人間でもありません。陛下、わたしは竜の少女です。用があってここにまいりました。』
王様『あなたは心乱れ、あなたの感官はかき乱されている。あなたの眼からはおびただしい涙が流れている。あなたは何を失ったか。また、あなたは何を求めてここにきたのか。婦人よ、さあ、それを言いなさい。』
竜女『王さま、人々はかれを、はげしい光輝をもつへびと呼んでいます。そのかれを、ある人が生活のために捕えました。かれを束縛から救ってください。かれはわたしの夫です。』
王様『力と精力をそなえたかれが、どうして旅人の手に帰したのか。竜女よ、竜がどうして捕えられたのか、そのわけを私に語れ。我々は知りたいと思う。』
竜女『竜は都市をも灰にすることができます。かれはそのような力と精力をそなえています。しかし、竜は正法を尊ぶから、それゆえ、努力して苦行を行なうのです。』
 王は、「ところで、竜はどこで蛇使いに捕えられたのか」とたずねた。すると、かの女は、王に説明して、つぎの詩をとなえた。
竜女『王さま、竜王は十四日目と十五日目に、四路でウポーサタに入ります。ある人が生活のためにかれを捕えました。かれを束縛から救ってください。かれはわたしの夫です。』
 そう言ってから、さらに請いながら二つの詩をとなえた。
竜女『宝石の耳飾りをつけた一万六千の、水に住む女たちもあなたに庇護を求める。法に従い、暴力によらずして、かれを解放してください。村、金貨、百頭の牛とひきかえに……。蛇は自由の身となって行くべきです。福徳を求めるものは、かれを束縛から解放してください。』
 そこで、王は蛇使いに向かって三つの詩をとなえた。
王様『わたしは、法に従い、暴力によらずして、蛇を解放しよう。村、金貨、百頭の牛とひきかえに……。蛇は自由の身となって行くべきである。福徳を求めるものは、かれを束縛から解放すべきである。猟師(蛇使い)よ、わたしは百ニッカと、大きな宝玉の耳飾りと、亜麻の花のように美しい四つの枕のついた寝台とを与えよう。また、二人の似合いの妻と、百頭の牡牛と牝牛とをあげよう。蛇は自由の身となって行くべきである。福徳を求めるものは、かれを束縛から解放すべきである。』
 すると猟師(蛇使い)は王に言った。
『王よ、贈り物がなくとも、あなたのお言葉は重いから、あの蛇を束縛から解放しましょう。蛇は自由の身となって行くべきです。福徳を求めるものは、かれを束縛から解放すべきです。』
 はこのように言ってから、竜王(偉大な人)を籠から出した。竜王は出て、花々のあいだに入り、その蛇の姿を捨てて、青年の姿をとり、身を飾り、大地を裂くかのように出現して立った。スマナーは空中から降りてかれのそばに立った。竜王は合掌して、王に敬礼しながら立っていた。
 その内容を説明するために、師(釈迦牟尼仏)は二つの詩をとなえられた。
 チャンペッヤ竜は解放されて、王につぎのように言った。「王様、あなたに敬礼します。国を栄えさす人よ、あなたに敬礼します。わたしはあなたに合掌します。わたしの住居をお見せしましょう」
 王は言った。「人が人でないものと親しくするなど、まったく信じがたいと言われる。もしあなたがそれを請い求めるなら、竜よ、あなたの住居を見たいものだ」
 そこで、王を信じさせるために、誓いをなしつつ、竜王(偉大な人)は二つの詩をとなえた。
『たとえ風が山を運び、月と太陽が地上に落ち、すべての河が逆流しようとも、王よ、わたしは決して嘘をつかない。天空が裂け、海が干からび、大地が回転し、須弥山が根こぎにひきぬかれようと、王よ、わたしは決して嘘をつかない。』
 王は竜王(偉大な人)にこのように言われても信じないで、『人が人でないものと親しくするなど、まったく信じがたいと言われる。もしあなたがそれを請い求めるなら、竜よ、あなたの住居を見たいものだ。』と再度同じ詩をとなえてから、「あなたは私によってなされた功徳を知るに価する。しかし、あなたを信ずることが適切か適切でないか、わたし自身が知っています」と、説明するためにつぎの詩をとなえた。
『あなたたちは、まことに恐ろしい猛毒をもち、大いなる威力をもち、短気である。わたしのおかげで束縛から解かれたのだから、あなたはわれわれになされたこと(恩)を知るべきです。』
 そこで、竜王(偉大な人)は、かれを信じさせるために、さらに〔呪詛による〕誓いをなしつつ、つぎの詩をとなえた。
『あなたになされたこのような行為を知らぬものは、見るも恐ろしい地獄で煮られるべきです。いかなる身的な快楽も受けるべきではない。籠に捕われて死んでしまうべきです。』
 そこで、王は彼(竜王)を信じて、讃歌をとなえた。
『あなたの誓いが真実であらんことを。怒らず、恨みをもつことなかれ。ガルダ鳥はすべての竜の一族の殺戮を捨てよ。あたかも、夏、人々が火を捨てるように。』
 竜王(偉大な人)のほうも王を讃えつつ、つぎの詩をとなえた。
『王よ、あたかも母が最愛の一子を慈しむように、竜の一族を慈しんでください。そうすれば、わたしは、竜の一族とともに、大いなる奉仕をなすでしょう。』
 それを聞いて、王は竜宮に行こうと望み、軍隊に出発の準備をせよと命じて、つぎの詩をとなえた。
『美々しい王の車に、よく調教されたカンボージャ産の駿馬をつなげ。そして、象に黄金の鞍をつけよ。いざ、竜の住居を見よう。』
 つぎは〔さとりをひらいた人〕(釈尊)の詩である。
『人々はウッガセーナ王のために、太鼓・小鼓・銅鼓・法螺貝を奏でた。王は燦然と輝きつつ、女たちの群れのなかで、尊敬をされつつ、出発した。王が都から出発するやいなや、竜王(偉大な人)は自分の威神力により、竜宮にあらゆる種類の宝石でできた城壁と、華麗な門と望楼とを作り、竜宮に行く道を美々しく飾りつけた。王は従者とともにその道を通って竜宮に入り、美しい場所や宮殿を見た。その内容を説明するために、師(釈尊)はつぎのようにおっしゃった。
『カーシ国を栄えさす王は、黄金をちりばめた地と、琉璃板をはめこんだ黄金の宮殿を見た。かの王はチャンペッヤ(竜王)の住居なる宮殿に入った。それは太陽の色彩にも似て、青銅色の稲妻のように輝いていた。かのカーシ王は、さまざまな樹々におおわれ、さまざまな香りに満ちたチャンペッヤの住居に入った。カーシ王がチャンペッヤの住居に入ったとき、天の楽器が奏でられ、竜の少女たちが踊った。カーシ王は喜んで、竜女の群れが行きかうその宮殿に登った。そして、栴檀の液を塗られた黄金づくりのよりかかり椅子にすわった。
 王がそこにすわるやいなや、彼らは様々な素晴らしい味の天上の食べ物を運んできた。また、一万六千の女たちにも、そのほかの会衆にも食べ物を与えた。王は、七日間、従者とともに、天上の食事や飲み物などを享受して、天上の妙欲により大いに楽しんで、安楽なベッドにすわり、竜王(偉大な人)の名声を讃えてからたずねた。
「竜王よ、あなたはどうしてこのような幸福を捨て、人間界においてアリ塚のうえにすわり、ウポーサタに入っているのか」
 竜王(前世における釈尊)はカーシ王にそのわけを話した。この内容を説明するために、師(現在の釈尊)は次のように仰った。
『かのカーシ王は、そこで食事をし、楽しんでから、チャンペッヤ(竜王)に言った。
「あなたのこの最上の宮殿は、太陽のごとき色彩で輝いている。このようなことは人間界には存在しない。竜よ、あなたは何の目的で苦行するのか。あの女たちはさまざまな腕輪をつけ、美しい衣服を着、丸い(形のよい)指をし、手のひらと足のうらを赤く塗り、すぐれた顔(色)をしていて、天上の飲み物をとって、飲ませる。このようなことは、人間界には存在しない。竜よ、あなたは何の目的で苦行するのか。また、川は平定であり、ひげのおおい魚がいる。アダーサ鳥、クンタ鳥の鳴き声が聞こえ、美しい浅瀬がある。このようなことは人間界には存在しない。竜よ、あなたは何の目的で苦行するのか。コンチャ・孔雀・天上のガチョウ・美しい声のコーキラが飛びかっている。このようなことは人間界には存在しない。竜よ、あなたは何の目的で苦行するのか。マンゴー・沙羅(サーラ)樹・ティラカ・ジャンプ・ウッダーラカ樹・パータリー樹が開花している。このようなことは人間界には存在しない。竜よ、あなたは何の目的で苦行するのか。蓮池はいたるところにあり、天上の香りがつねにただよっている。このようなことは人間界には存在しない。竜よ、あなたは何の目的で苦行するのか」
 竜王(前世における釈尊)は言った。
『子供のためではない。財産のためではない。寿命のためではない。王よ、人間の胎〔に再生すること〕を望むがゆえに、わたしは努力して苦行するのである』
 このように言われて、王はつぎの詩をとなえた。
『あなたは赤い眼をもち、広い胸をしている。整えられた髪と髭は飾りたてられている。そして体は赤い栴檀水で美しく塗られている。あなたはガンダルヴァの王のように諸方を輝かせている。あなたは神通力をそなえ、大威神力をもっている。そして、あらゆる欲望にとりまかれている。竜王よ、わたしはあなたにそのわけを問う。人間界はどうしてこれよりすぐれているか』
 そこで竜王(偉大な人)はかれに説明して言った。

『王よ、人間界以外のどこにも、清浄と節制は見出されない。
 わたしは人間の胎に生まれて、生死(輪廻)をおわらせよう。』

 それを聞いて、王は、つぎのように言った。
『まことに、智慧あり、博識で、おおくのことに思いをめぐらす人々は奉仕されるべきです。竜よ、わたしは竜女たちとあなたとを見て、少なからぬ福徳(善行)をなしましょう。』
 すると、竜王はかれに言った。
『まことに、智慧あり、博識で、おおくのことに思いをめぐらす人々は奉仕されるべきです。王よ、あなたは竜女たちと私とを見て、少なからぬ善行をなすべきです。』
 このように言われたとき、王様は帰ろうと望んで、「竜王よ、われわれは長いことおじゃました。帰ろうと思います」と暇乞いをした。すると竜王(偉大な人)は、かれに、「それでは、大王さま、好きなだけの財宝をおとりなさい」と言って、財宝を示しながら次のような詩をとなえた。
『このおびただしい黄金はわたしのものです。黄金の集積はシュロの高さほどです。ここからもって行って、黄金の家を作り、そして銀の壁を作りなさい。真珠と琉璃をいっぱい積んだ五千の車があります。ここからもち出し、宮中の地面にまき散らしなさい。そして泥土を見えなくし埃のたたないようにしなさい。最勝の王よ、このようにこよなく輝く最上の宮殿に住みなさい。すぐれた智慧をもつものよ、富み栄えるバーラーナシーの都に住み、国を治めなさい。』
 王はかれの話を聞いて贈り物を受けとった。そこで、竜王(偉大な人)は、竜宮中に、太鼓を打たせて触れさせた。「王の会衆はみな、欲しいだけ黄金などの財宝をとれ!」 そして、何百もの車に積んだ財宝を王に贈った。そのとき、王は大いなる名声とともに竜宮を出発して、自分の都に帰った。それ以来、ジャンプディーパ(インド)の大陸は黄金を埋蔵するようになったということである。師(釈尊)はこの法話をされてから、「このように、むかしの賢者たちは、竜の繁栄を捨てて、ウポーサタに入ったのである」とおっしゃって、過去の前生を現在にあてはめられた。
「そのときの蛇使いはデーヴァダッタであり、スマナーはラーフラの母(ヤソーダラー)であり、ウッガセーナ(王様)はサーリプッタであり、チャンペッヤ竜王は実にわたくしであった」と。

テーマ : スピリチュアル
ジャンル : 心と身体

プロフィール

真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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