お釈迦様と王様(6)

○ジャータカ第521話 『三羽の鳥前生物語

 これは、師(釈迦牟尼仏)が祇園精舎に滞在しておられたとき、コーサラ王に訓誡くんかいとして語られたものである。説法を聞くためにやって来たコーサラ王に仏(お釈迦様)は言葉をかけられ、
「大王よ、王というものは正しく国を治めなければならない。それは、王たちが正しくない場合その臣下たちも正しくなくなるからである」と、第四篇においてとられた方法で訓誡された。そして非道を行くことと行かないこととのわざわいと福とを語られ、「夢のたとえ」などで、諸欲にたいする禍を詳しく述べられた。
「大王よ、かれらは、死による約束
 そしてまた賄賂わいいろを得たり しはしない
 戦争はなく 征服もない すべては死滅に到るもの
 かれらが、あの世へ行くときは、自らなした善行以外に頼れるものはない。
 それゆえ劣ったものにつかええることは、何としても捨てなければならない。評判にまかせて、放逸ほうしになってはならないのである。怠らないで、正しく国を治めるがよろしい。むかしの諸王は、仏がまだお生まれにならない時でさえも、賢者たちの教えを守り、正しく国を治め、死後、天の都を満たして行ったのである」と言って、王の求めに応じて過去のことを話された。

 むかし、バーラーナシーでブラフマダッタ王が国を治めていた。かれは子供がなく、願っても王子にも王女にも恵まれなかった。ある日、王は大勢のお供をつれて、御苑へ行った。日中、御苑で楽しんだ後、御料の沙羅サーラ樹の根もとに寝床をのべさせて、しばらく眠った。眼をさまして沙羅樹を見あげると、そこに鳥の巣が見えた。見ているうちに、王には愛情がわいてきた。王は、一人の男を呼びよせて、「この木に登り、あの巣のなかに、何かがいるかどうかを調べてまいれ」と命じた。男は登って、そこで三つの卵を見つけた。
 王は「それでは、それらのうえに鼻息を吹きかけんようにしろ」と言い、はなかごのなかに綿わたをしき、「ここにその卵を入れてから静かに降りてまいれ」と言って降ろさせた。そして花かごを手に受け取ると、大臣たちに「いったい、これらは何という鳥の卵じゃ」とたずねた。わからなかったので、猟師たちを呼びよせてたずねた。
 猟師たちはこたえた。「大王さま、一つはフクロウの卵、一つはキュウカンチョウ錦華鳥の卵、あと一つはオウム鸚鵡の卵でございます」
「しかし、どうして一つの巣に三種の鳥の卵が入っているのだ」「はい、王さま。危険がなければ、ちゃんと産みつけられましたものは、腐ることがございませんので」
 王は喜んで、「これらをわしの子にしよう」と思い、その三つの卵を三人の大臣にたくして言った。「これらは、わしの子になるのじゃ。おまえたちは、よく世話をし、卵がかえったならば、わしに知らせてくれ」かれらは大事に守った。最初にフクロウの卵が孵った。大臣は、一人の猟師を呼びよせて、「雌であるか、雄であるかを見てくれ」と言い、猟師が調べて、「雄でございます」と答えると、王のもとに行って申しあげた。「陛下、あなたの王子さまがお生まれになりました」
 喜んだ王は、かれにたくさんの財宝を与え、「王子を大事に育ててくれ。その名をヴェッサンタラとつけるのじゃ」と言いわたして帰した。それから数日後、キュウカンチョウの卵が孵った。例の大臣もそれを猟師に調べさせ、「雌でございます」と聞くや、王のもとに行って、「陛下、王女さまがお生まれになりました」と申しあげた。喜んだ王は、かれにも財宝を与え、「わしの姫を大事に育ててくれ。その名をクンダリニーとつけるのじゃ」と言いわたして帰した。かれはそのとおりにした。
 また数日後、オウムの卵が孵った。雄だった。喜んだ王は財宝を与えて、「わしの王子のために、盛大な祝典を挙げ、ジャンブカと名づけるのじゃ」と言いわたして帰した。かれはそのとおりにした。
 三羽の鳥(フクロウ、キンカンチョウ、オウム)は、それぞれ三人の大臣の家で、王子・王女の待遇によって成長した。王は、「わしの王子は、わしの姫は」というのが口ぐせだった。そこで、大臣たちは、たがいに笑い合っていた。
「王さまのなさっておられることをごらん。畜生を『わしの王子は、姫は』と言って歩きまわっていらっしゃる」
 王は考えた。「この大臣たちは、わしの子供にどれほどの智慧があるかを知らないのだ。 かれらにはっきり分からせてやろう」
 そこで、一人の大臣を、ヴェッサンタラ(フクロウ)のもとへ、「父はそなたに質問をしたい。いつ来て問えばよいものか」と、使者を出した。大臣はやって来て、ヴェッサンタラにお辞儀をして、その用向きを伝えた。ヴェッサンタラは自分の養育に当っている大臣を呼ばせて、「父上が、わたしに質問をなさりたいとのことであるが、父上がここにお見えになられたら、敬意を払わねばならない。いつ、来ていたただくのがよいか」とたずねた。大臣は、「いまから七日目がよろしゅうございます」と言った。それを聞いて、ヴェッサンタラは、「父上は、いまから七日目においでくださるように」と言って帰した。使者は帰って王に告げた。
 王は七日目に、都にふれ太鼓たいこをめぐらせて子供のすまいへ行った。ヴェッサンタラは、王に篤く敬意を払い、また奴隷・雑役夫などにも敬意を払わせた。王はヴェッサンタラ鳥の家で食事をし、手厚いもてなしを受けたあと、自分の住居に帰った。それから宮廷に大きな仮小屋を作らせ、都にはふれ太鼓をめぐらせた。そして美しく飾られた仮小屋に、大勢の人々に囲まれて坐ると、王は、「ヴェッサンタラをつれてまいれ」と大臣のもとに使者を出した。大臣はヴェッサンタラを黄金の椅子に止まらせて案内してきた。フクロウは父王の膝に止まって遊び戯れ、それから椅子に止まった。そこで王は、大勢の人々のまんなかで、フクロウに王道を質問して、最初の詩をとなえた。
『ヴェッサンタラにこれを問う。鳥よ、そちに 吉祥あれ 国を治めて 行くものに いかなるつとめが 最上ぞ』
 これを聞いて、ヴェッサンタラは質問に答えないで、まず、王を怠慢であるとたしなめて、第二の詩をとなえた。
『わたしにとって あまりに 遅いバーラーナシー領主 父上カンサ あなたは怠慢で ございます まじめな息子に なさった問いは』
 この詩で呵責したあと、「大王よ、王というものは三つの道に則り、正しく国を治めなければなりません」と言って、王道を説いて言った。
『嘘と怒りと 嘲笑あざわらいとを 何よりもまず しりぞけて 務めを行なう べきでしょう 王よ、これが道なのです  父よ、あなたが そのむかし お疑いなくなさった苦行 むさぼり、邪悪な 行ないを これからしては なりません  王に怠慢 あるならば 国威増す者よ 王国の すべての富は 消えましょう これを王禍と 申します 父よ、シリー(吉祥天) アラッキー(不吉天)は 問われてこのよう 言いました
〔嫉妬をもたず精進し励む人をわたし(シリー)は喜びます〕
〔嫉妬深くて よこしまで 行ない汚れた 人々を 善(輪)の破壊者 カーラカンニーは喜ぶのだ』と
 大王よ それゆえみなに 優しくし すべてのものから 護られよ 不運を払い 大王よ 幸を住居と されますように 幸に恵まれ 勇気あり 実に偉大な 丈夫たる カーシの主は 諸々の 敵を根こそぎ 滅ぼすのです 生類の主 帝釈天サッカもまた 努力をかさねて 怠らず まこと善事を 堅固になして こころを尽くし 励みます (梵)父天、諸天 ガンダッバ かれらはともに生きるもの 努力、精進 するものに 諸天は随伴ずいはん いたします 父よ、あなたは 怠らず そしりを受けず 精を出し どの務めにも お励みください なまけ者には 楽ありません ここに務めの 道があり これがあなたへの 訓誡です 友には幸を 敵には苦を 与えるためには充分の』
 このように、ヴェッサンタラ鳥(フクロウ)が一つの詩で王の怠慢を呵責し、十一の詩で道を説くと、「質問が、仏のように巧みに答えられた」と言って、大勢の人々は、これまでにない感激を受け、百遍もの拍手喝采を送った。王は喜びに満ち、大臣たちに声をかけた。「これ、大臣たち、わしの王子ヴェッサンタラは、あのように答えたが、どう取りはからえばよいか」「大軍師になされたらよろしゅうございます、陛下」「では、あれに、大軍師の地位を与えることにしよう」
 こうしてヴェッサンタラをその職につかせた。かれは、それ以後、大軍師の地位にあって、父の仕事に励んだ。(ヴェッサンタラ問答終り。)

 数日後、王はまた前に述べたような次第で、クンダリニー(キンカンチョウ)のもとへ使者を出した。そして七日目になるとそこへ行き、もどって来て、同じように仮小屋の中央に坐った。王は、クンダリニーが案内されてきて黄金の椅子に止まると、王道について質問し詩をとなえた。
『王の親族 クンダリニーよ そちは答えが できようか 国を治めて 行く者に いかなる務めが 最上ぞ』
 クンダリニーは、このように王から王道を問われたとき、「お父上、わたしに『女性として何かを話すだろう』とお考えかと思いますので、わたしはあなたに、王道全体をただ二句のなかに含めてお話しいたしましょう」と言って、詩をとなえた。
『父よ、わずか 二句のなかに すべてのことが 尽くされます

 未得のものを 得ることと
 既得のもの を守ること

 父よ、賢く 意味を知る 賭博・詐欺せず 酒をも飲まぬ 失財しない 大臣を 父よ、知らねばなりません 父よ、あなたの お持ちの財を 馭者が車を 守護するように 守ってくれる その人は あなたの務めを 果しましょう 内部の人を 掌握し 自ら心を 観察し 蓄財、借財 いずれをも 他人にまかす ことなきように 自ら入と 出を知り 自ら作・不作を 知るべきでしょう 呵責すべきは 呵責し罰し 褒めるべきは 褒めましょう
 調御者の主よ 自らの 民に利益を お教えなさい あなたの臣下が 不法にして 財と国とを 亡ぼさぬよう 急いで務めをしたり また させたりしては いけません 急いで 事を行なって 後悔するのは 愚か者 あなたは場所も わきまえず 激しい怒りを 示されぬよう 怒りによって 家柄をうしなう家は 多いから われは自在の 者なりと 父よ、無益に 努められぬよう あなたの国の 男女のために 苦を招いては なりません
恐れを知らず 欲望に 従うならば その王の すべての財は うしなわれます これを王禍と 申します ここに務めの 道があり これがあなたへの 訓誡です いまや賢く 功徳を積んで お酒も飲まず 破滅なく 徳あるかたに なられませ、大王よ 破戒の者は 地獄に落ちます』
 このように、クンダリニーもまた、十一の詩によって道を説いた。満足した王は、大臣たちに声をかけてたずねた。「これ、大臣たち、わしの姫クンダリニーは、あのように答えたが、どのように取りはからえばよいか」「大蔵大臣になされたらよろしゅうがざいます、陛下」「では、あれに、大蔵大臣の地位を与えることにしよう」こうしてクンダリニーをその職につかせた。かの女はそれ以後、大蔵大臣の地位にあって、父の仕事に励んだ。(クンダリニー問答終り。)

 数日後、王はまた前に述べたような次第で、ジャンブカ智者(オウム)のもとに使者を遣わした。そして七日目になるとそこへ行き、祝福を受けてもどって来て、同じように、仮小屋の中央に坐った。大臣は、ジャンブカ智者を黄金で鏤(ちり)ばめた椅子に止まらせ、それを頭に載せてやって来た。智者(オウム)は父の膝に止まり、遊び戯れてから、黄金の椅子に止まった。そこで王は、かれに質問をして、詩をとなえた。
『わしは、コーシャ(姓のヴェッサンタラ)にも クンダリニーにも 同じように 質問したぞ ジャンブカよ、そちは いま語れ 力のなかの 最上力を』
 このように、王は(偉大な人)に質問をしたが、他の者たちにたずねるたようにはしないで、特別な方法でたずねた。そこで智者は王に、「では、大王よ、よく注意してお聞きください。あなたにすべてをお話しいたします」と言って、さし出された手に千金の袋を載せるかのように、説法をし始めた。

『世にいる偉大な 人間は 五種の力を もってます そのうち腕の 力を名づけ 最後の力と 称します また長寿者よ 財力を 第二の力と 称します また長寿者よ 大臣力を 第三の力と 称します 生まれの力は 疑いもなく これ第四の ものなのです これらすべてを 賢者は得ます
 力のうちの その最上 第一の力は 慧の力 賢者は智慧の 力をそなえ 利益を獲得 するのです 愚かな者が 豊かに富んだ 土地をたとえ 得ようとも それは他人に 奪われましょう いやおう無しに 腕づくで たとえ生まれが 王族であり 王位を獲得 しようとも 智慧が劣った カーシの主なら すべてと共に 生きえません 智慧は知識を 決定し 智慧は名声 高めます 智慧ある人は この世における 苦しみのなかに 楽得ます 聞こうと願わず そしてまた 博識の人にも近づかず 正しいことを 知らない者は だれも智慧を 得ることがない 法と差別を よく知って 時に立ちまた 精進し 時に応じて 行なうならば その行ないは 成功します 努力をかさねる ことも無く 努力をしようと することもなく いやいやながら 行なう者は 利益が充分 熟しません 内観を專(もっぱ)ら 行なって 同じく努力を つみかさね いやがらないで 行なう者は 利益が充分 熟します 努力すべきことに 専心し 積みあげたものを 守ること 父よ、あなたは これを行ない 怠惰にふけっては なりません 愚者が怠惰で 没することは まるで葦家の ようなもの』
 このようにボーディサッタは、これだけの点について五つの力を讃嘆し、智慧の力を挙げ、まるで月輪を取り出すかのように話した。そして今度は、十の詩をもって王に訓誡した。
『大王よ、法を 行ないなさい 両親にたいして 王族よ この世で法を 行なうならば 王よ、天に昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい 妻子にたいして 王族よ この世で法を 行なうならば 王よ、天に昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい 朋友にたいして 王族よ この世で法を 行なうならば 王よ、天に昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい 軍隊にたいし 王族よ この世で法を 行なうならば 王よ、天に昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい 村、町にたいし 王族よ この世で法を 行なうならば 王よ、天に昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい 国、地方にたいし 王族よ この世で法を 行なうならば王よ、天に 昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい 修行者、バラモンに 王族よ この世で法を 行なうならば 王よ、天に昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい 鳥獣にたいし 王族よ この世で法を 行なうならば王よ、天に昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい 法を積めば楽が来ます この世で法を 行なうならば 王よ、天に昇るでしょう  大王よ、法を 行ないなさい インダ諸天は 梵天ともに よく積み、天位を 得たのです 王よ、法を怠らぬよう』
 このように、十の法行の詩をのべてから、なおも忠告して最後の詩をとなえた。
『ここに務めの 道があり これがあなたへの 訓誡です
 智者に仕える 善人であれ 自ら充分 知る者であれ』
 このように、(偉大な人)は、天の川を流すがごとく、仏のように巧みに法を説いた。大勢の人々は、大いに敬意を払い、千遍もの拍手喝采を送った。満足した王は、大臣たちに声をかけてたずねた。「これ、大臣たち、わしの若きジャンプ果のようなくちばしをもつ王子ジャンプカ智者は、あのように答えたが、どのように取りはからえばよいか」「将軍になされたらよろしゅうございます、陛下」「では、あれにわしは、将軍の地位を与えることにしよう」そこでジャンプカをその職につかせた。かれはそれ以後、将軍の地位にあって、父の仕事に励んだ。三羽の鳥はすばらしい尊敬を受けた。三羽とも人々に、利と法とについて教えたのだった。王は<偉大な人>の忠告を守って、布施などの功徳を積み、天上に昇る者となった。

 大臣たちは、王の葬式をすませると、鳥たちに話しかけて、「主なるジャンプ鳥さま、王さまは、あなたに傘を差しかけるようになされました」と言った。智者(偉大な人)、「わたしには王国など必要ありません。あなたがたが、立派に国を治めてください」と言って、大勢の人々に戒を守らせた。そして、「このように裁判を行ないなさい」と裁判法を金の板に刻ませて、森に入ってしまった。その教えは、四万年にわたって効力があった。師は、王へ訓誡として、この法話をされて、[過去の]前生を[現在に]あてはめられた。「そのときの王はアーナンダ(阿難)であり、クンダリ二ーはウッパラヴァンナー(蓮華色)であり、ヴェッサンタラはサーリプッタ(舎利弗)であり、ジャンプカ鳥は実にわたくしであった」と。


テーマ : 心に響く言葉・メッセージ
ジャンル : 心と身体

プロフィール

真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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