お釈迦様と王様(1)

釈迦しゃか様(釈迦如来、釈迦牟尼仏)は真理をおこなう完成された偉大なおかたですが、その前世の段階では、まだ完璧ではありませんでした。お釈迦様の前世物語(ジャータカ物語)を読むと、ふと不思議に思うことがあります。一つの説話が終わると、かたであるお釈迦様は「このようにして、登場人物の○○はかるまによって○○に生まれ変わった」と結ぶのですが、「善業と功徳により天界に生まれる者となった」「梵天に生まれ変わった」「帝釈天サッカになった」と明言する場合と、「○○はその行いとかるまによって、しかるべき場所に生まれ変わった」と言葉をにごす場合があります。
 さらに読み進めると、ジャータカでは、お釈迦様が動物として頻繁に登場します。有名な『帝釈天に自分の身をささげたうさぎ物語』でも、お釈迦様は『ウサギ』でした。動物は、六道輪廻(天人、人間、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道)における下から三番目、畜生道に相当します。善行をなし、心・言・行を常に清くたもてば梵天や帝釈天といった神々に…あるいは人間になれるはずなのに、動物の胎に宿ったということは、お釈迦様が何らかの罪を犯したことを意味します。では、前世におけるお釈迦様が犯した罪とは何なのでしょうか?
 あるジャータカ物語は、お釈迦様が地獄に落ちた事例を語ります。お釈迦様といえども地獄に落ちるという、衝撃的な内容です。果たして、どうして地獄に落ちたのでしょうか? それはジャータカ第538話『ムーガパッカ前生物語』で言及されています。



 菩薩(お釈迦様の前世)は二十年間バーラーナシーで国を治めてのち、没してウッサダ地獄に生まれ、そこで八万年ものあいだ苦しみの生活をしてから、三十三天に再生した。そしてそこでも寿命の尽きるまで暮らして、そこから没してのちは、「もっと上の神々の世界に行きたい」と思っていたところであった。
 サッカ(帝釈天)は菩薩のもとへおもむくと、
「友よ、きみは人間界に生まれたならば、きみのもろもろの〈悟りのための実践〉も完成されるであろう。そしてまた、たくさんの人々に繁栄をもたらすであろう。実はいま、カーシ王の第一夫人であるチャンダー妃が王子を欲しがっている。妃の胎に生まれてやってくれ」と言った。帝釈天サッカの下令を受けた菩薩は、五百人の神の子らとともに天の世界から人間の世界に下り、みずからはチャンダー妃のはらに再生し、他のものたちは大臣たちの夫人の胎に再生した。妃の胎内は、まるでダイヤモンドで満たされたかのようになった。臨月を迎えると、めでたい特徴をそなえた男の子を産んだ。まさにその同じ日に、大臣たちの家々でも五百人の男の子が生まれた。
 たいそう喜んだ王様は、王子の命名の日がくると、占いの先生であるバラモンたちを丁重にもてなし、王子の相に悪い点はないかどうかをたずねた。バラモンたちは、王子が申し分のない相をそなえているのを見て、
「大王さま、王子はまことにめでたく幸せな相をそなえておられます。一つの大陸はおろか、四つの大陸ぜんぶを統治できましょうぞ。この方には、悪い相などこれっぽちも見うけられません」と報告した。王はこれにすっかり満足した。そして、王子にどのような名前をつけようかと考えて、王子の生まれた日にカーシ国中に雨が降り、その雨にぬれながらテーミヤマーナ王子が生まれたことから、『テーミヤ王子』と名づけた。
 さて、生まれて一ヶ月がったとき、テーミヤ王子は着飾って父王の前につれていかれた。王はかわいいわが子を見ると、抱いて膝の上にのせて、あやしていた。すると、そのとき、そこへ四人の盗賊が引ったてられてきた。王は、そのなかの一人を刺のついた鞭で千回たたけと命じ、また一人は鎖の牢獄に閉じこめよと、また一人は身体を槍でつけと、そして最後の一人は串刺しの刑に処せと命じた。
 テーミヤ王子(菩薩)は、この父王のことばを聞いて恐怖におののき、
「あー、わが父君は王権にたよって、みずから地獄に落ちるような重大なカルマを作っておられる」と心配した。
 あくる日、王子は(王権の象徴である)白い天蓋の下で、美しく飾られたベッドに寝かされていた。少しばかり眠ってから目を覚ました王子は、両眼を開けて、まじまじと白い天蓋を眺め、王権の強大さを知った。すると、もともと恐れおののいていた王子に、なおいっそうの恐怖心が生まれた。
「わたしはいったい、どこからこの王宮にやってきたのかしら」と思いをめぐらすうちに、前生を思い起こすことのできる智慧によって、自分が天の世界からやってきたことを知った。さらにそれ以前のことを観察してみると、地獄におちて苦しんでいるすがたを見た。さらにそれ以前はとみると、まさにこの同じ城内で、国王であったことを知った。
「わたしは二十年間、王としてこの国を治め、そののち八万年ものあいだウッサダ地獄で苦しんだが、いままたこのような盗賊の家に生まれてしまった。父はきのう、四人の盗人がつれてこられたときに、地獄に落ちるようなあんな粗野なことを言っていた。もしも自分が国を治めることになったら、また地獄に再生して、大きな苦しみを味わうことになるのは必定だ」と思うと、これ以上ないという恐怖心がおこった。血色のよかった王子の体は、まるで手で揉まれた赤い蓮の花が枯れしぼむように、色あせてしまった。
「いったい、どうすればこの盗賊の家から脱け出せるだろう」と、王子は寝ながら、もの思いにふけっていた。ときに、前生で王子の母親だったことのある女神が、天蓋に宿っていた。王子をなぐさめて、王家を抜け出し、出家に至る道を丁寧に教えた。王子は苦行を実践し、やがて出家者となって多くの人々を天人界へ導く者となった。



 犯罪者ではなく、王者(権力者)であるがための地獄道だったのです。日本の戦国時代劇を見ていると、権力者は人を簡単に処刑します。人気NHK大河ドラマ「真田丸」も、豊臣秀吉の狂気を描いています。聚楽第じゅらくだいに秀吉を揶揄する落書きがあったことに激怒した彼は、警備担当の17名を落書きを許した罪に問い、耳と鼻を削ぎ落した上ではりつけに処し、犯人とおぼしき人物2名の死後、その縁者や近隣住民60名以上をも磔で処刑したのです。これは当時の貴族の日記にも記録されており、歴史上の事実です。このような横暴な権力者に対して仏教は、軽率に人の命を奪うと、たとえお釈迦様といえども地獄に落ちると伝えているのです。

 さて王様(権力者)は必ず地獄に落ちねばならないのでしょうか? そんなことはありません。ジャータカ物語(釈迦前生物語)には功徳をつんだ王様が、天人や神々の世界に栄誉をもって生まれ変わった事例がいくつも収録されています。では、どうしたら王様(権力者)が天国へ行けるのか、ジャータカを紐解いていましょう。


テーマ : 心、意識、魂、生命、人間の可能性
ジャンル : 心と身体

プロフィール

真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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