第十二章「神と人のいきさつ」 開闢以来の珍事件/罰金取戻し談判

○第十二章 神と人のいきさつ

△開闢以来の珍事件

 く神の仕事がますます進んで行く大本も、また一面出口家としての人間沙汰も見ねばならぬ。明治三十二年大本二代世嗣 純子すみこ刀自と教主〔出口王仁三郎聖師〕との婚約が成って、の間に同三十五年三代世嗣 直霊なほひ嬢が生まれた。しかるにはからずも、ここに幽界と現界との衝突が、教祖のお筆先から惹起された。それは

の直霊は水晶のみたまだから、うえ疱瘡ほうそうは出来ぬぞよ』

 との厳命なのである。教主も我子の植疱瘡時期がせまって来てるのに教祖から許しがなければ、天下の法度ほっとそむかねばならぬ。そううしている中に、教主は所要のため大阪まで行く用件が出来た。の留守中に役場から警察からしきりと植疱瘡するようにと迫って来た。
 正月から五月まで幾回ともなく督促とくそくされても、或る事情のためがんとして応じなかったので、到頭とうとう警察から呼出し状が来て、植疱瘡をしなかった罰として、科料金二十銭をせられた。それもそのままはらわず放って置くと、今度は一足飛びに二十円と云う罰金が賦課ふかされた。こうなると教主も当時の生活状態で、二十円と云う多額の金があるべき筈もないので、今更教祖に対して愚痴をこぼして見ても始まらぬし、一方の事を役員幹部の人々にはかって見ると、罰金を出す事は非常に反対で
れが御筆先の時節到来で、世を引繰ひっくり返すのだ』
 などと云うて仲々承知しない。仕方なく教主は純子刀自と相談して、の上は着物を売り払ってもおかみの命には従わねばならぬと、箪笥たんすの底をからにして、やうやうに二十円の罰金を纏めて支払ったのである。
 ところが罰金の方はそれで済んだものの、治まらぬのは幹部の役員連中であった。教主が吾々にくして内証で罰金を上納したと云う事は、何處どこまでも不都合とあって
『何んとう教主は弱い人だろう、あんな金なんか支払う必要はないと云っているのに』
 さあ、それからと云うものは、蜂の巣を崩した様な騒ぎ。一同蓑笠みのかさ姿に身を堅め、まるで百姓一揆のように、警察へ談判に出かけて行った。そして、の幹部の人々の云い草が面白い。
『植疱瘡をしなかったと云って罰金を取るとは、日本人が外国人に負けた形になるから、出した金がしいのではない。だから返して貰いたい』
 こう云うわけの判らぬ事を、さも得意そうに喋り立てた。警察では穏やかになだめすかしても、一向いっこうに納得しない。返してれなければ此処ここ一寸いっすんも動かぬから等と、りきみ返って頑張って見たものの、一向手答てごたへがないので、今度は役場の方へ押し寄せた。そして警察で云った様な事を繰り返して、役場の吏員りいんに申し出ると
『そんな、わけの判らぬ事を云っても駄目だ。法律がそうするのだから仕方がない』
 と同じ事が繰返されるのみであった。こうなると少々脳の調子の狂った一同は、又も詰問きつもんし始めた。
『法律がそう決めているのなら、の法律を改めて貰いたい。神様の御命令に従わぬと、役所が潰れるがどうだ、返せ』
 等と益々ますます無理難題を吹き掛けた。結局役所では神様の言うことも相手にしてれぬので、一同思案に暮れながら一時引き下がる事にした。こんな騒ぎは綾部開闢かいびゃく以来の珍事件であった。


△罰金取戻し談判

 如何いかにしても種痘しゅとうの罰金二十円を取り戻さねば虫が納まらぬと云う見幕で、役員幹部連中は寄るとの話に熱中して休む間もなかった。誰云うとなく、うなればとても田舎の役員の吏員や、警察の署長等に物の判る人間は一人もないから、一層いっそう検事局へ上申して罰金取り戻しの訴訟を提起しようと一決して、またもや一団となって検事局へ押し掛けて行った。検事局で、事の真相を探って見ると大本の信者で、かも、御筆先とやらを楯に取り、最初から法律で定めてある種痘をせずに、それをおこたりながら罰金を取られて、それを取戻しに来るとは近頃珍しい、大本の信者のやりそうな事だ等と、頭からてんで相手にしてくれぬ。それにもりず、役員共が迫るので、今度は検事もからかい半分に
『そんな譯の判らぬ事を何時までも申出ると、軍隊を差向けて、大本なんてう譯の判らぬ教を叩き潰して仕舞しまうが、どうだ』
 さあ、こうなると一同の連中は益々いきどおり出し、っとなってやけ気味ぎみ
『そりゃ、面白い。こうなりゃ、一つ吾々われわれの神様と軍隊といずれが強いか力較べをしよう。さあ、何万の軍隊でも恐れはせぬから、何時でもやって来い』
 など喊聲かんせい怒號どごうとで、こえを張り上げるやら、今にも血の雨でも降り出しそうになった。こうなるとかえって検事局の方でも少し手古てこり出して来て、やうやう一同をていよくなだめすかしてへさした。
 斯那こんな騒動をき起こしては、世間の手前てまえもあることとて、教主はの翌年からは、誰にも知らせぬ様にして罰金を上納じょうのうしてた。そんな事とは知らぬ役員幹部連は
『役場からも種痘しゅとう罰金を取りに来なくなった。こうなると吾々の神様が勝利をめたけだ』
 などと、喜んで有頂天になっている。一同が余り呑気のんきそうに喜んでいるのだから、教主も黙って居る事も出来なかったと見えて
『実はあの罰金はお前達に内證ないしょうにして、上納していたのだ』
 役員たちも、今まで正直に思っていた事が、馬鹿らしくなったと見えの得意さも何處どこへか消え失せて、かえって教主に向って怒り出した。
んとう先生は不正直だ、先生は四ツ足だ、外国趣味の人だ、しからん』
 の時ばかりは、余程よほど役員の面々も感情を害したものと見え、教主をば色々とののしあざけった。教主としては、そうしてまで裏面では法律に従ってかねばならなかった。


テーマ : 心に響く言葉・メッセージ
ジャンル : 心と身体

プロフィール

真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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