第十一章「元伊勢の神水」 産盥産釜の水取り/三つの怪火

○第十一章 元伊勢の神水

△産盥産釜の水取り

 丹波もと伊勢いせあま岩戸いわとうぶだらいうぶがまの此の二つの水は、生粋きっすいの水晶の水として、神代より伝って今にき出て居る。の水晶の御水をれとのお筆先が、明治三十四年四月二十八日に現われた。
 の水晶の水は、昔からみとり禁制の神水となっているので、萬一まんいち此の禁制を犯した場合は、神罰立ちどころに、大風大洪水が起るとい伝えられて、誰も触れる事の出来ぬ様に、特に常に神官が見張りをして居るのみならず、上の方から見下ろしたところでは、小さいながれがあって二間ばかりの板を渡さねば行かれない屈強の場所にある。
 こうした神水を汲み取れとのお筆先は、こうであった。

うしとらの金神の指図でないと、此水は滅多めったに汲みには行けんおであるぞよ。此神が許しを出したら、何處どこからでも指一本さす者もないぞよ』(※1)

 とあるので、の神命を果す役目は最も大切な用であるから、づ役員木下きのした慶太郎けいたろうが下検分役として命ぜられた。木下はただちに現場に出張して、一通りたしかなる報告をもたして来たので、愈々いよいよ教祖を始め一行いっこう四十二名がござすげがさたび装束しょうぞくをして出立しゅったつする事となった。の時役員の一人が御水を入れる物が無くてはかなわずと、手づからあおたけを切って来て、それで二つの筒をこしらえて携帯して出発した。
 一行は最初丹波たんばないぐう松代まつしろに到着して、暫時しばし旅の疲れを休めた。こんなに多数の者があの見張厳重な神水の湧き出る所へ行く事は出来ない。一時此処ここで大部分の人々が待つ事にして、一行の中からもりよしまつと云う人に命じて、先方の様子を見届けにつかわしたのであった。森津は日の暮れるのを待ち兼ねて、ひとり見張をしている神官の様子をさぐりに行った。行って見ると、神官達は日も暮れたので、今日も無事にんだと云わぬばかりに、の場から立ち去る所であった。森津はこれさいわいなりと急いでむねを教祖のもとへ報告した。其処そこで早速青竹の二本の筒をたずさえて、大急ぎで岩戸へ駆けつけた。自分が前に下検分に来た時、念のめに置いて来た、一本の丸太を小川へ渡して、それを伝って、やうやうの思いで、二本の青竹の筒へうぶだらいうぶがまとの水をば汲み取り、それを急ぎ持ち運んで、松代屋へ引上げて来た。
 丁度ちょうどその時一行は、わるわる風呂へ這入はいって、夕食をきっしている所であった。其処へ木下が二本の青竹の筒に入れた神水を、うやうやしく教祖の前へささげた。の時教祖は木下に向って
『どうじゃった、仲々なかなか困難したろう。流れのそばに大きな朽木くちきがあったらう。あれで渡り越したかな』
 とわれて木下は、教祖は何もかも知っての事かと不審がっていた。
左様さようで御座います。丁度さいわい其処に一本の朽木があったものでしたから、それで助かりました』
『ああ、そうじゃろう。それはまさしく龍神様の加護かごであるから、御礼を申さねばなるまい』
 と教祖はの日は何事も語らず、翌日になると、ひとりで皆に知らせないで、態々わざわざ御礼参りに岩戸いわとまで行って、其の日の夕方帰られた。こうした教祖のかげでしている事は、一行の人々にんの意味かが一向判らなかった。


△三つの怪火

 水晶の神水も、無事あま岩戸いわとから汲み取ったので、一行は足並みそろえて綾部へ帰って来た。教祖は運ばれて来たの水晶の神水を、ず神前へそなえなければならぬとはれて、精進潔斎けっさい沐浴して、青竹の筒から神水を神器しんきに移して、神床を清め祓って恭しくささたてまつった。おがりは皆の者共へ少しづつ配って、残りの水をば大本おほもとの井戸と、もと屋敷やしきかくぞうと云う人の家の井戸と、ほか四方げんすけの内井戸へ五しゃくづつ配水したのである。後の残りの水は丹後の冠島おしま沓島めしまと、真中まんなかの龍宮海へ流せとの命令であった。そうして教祖はこんな事を言われた。
『今に京都大阪あたりから、の御水を戴きに来る様になりますぞ』
 と、あんごとく今では其の神水の功徳くどくあこがれて、京大阪はおろか九州北海道のはてからも、陸續として汲み取りに来る様になった。
 今の大本の井戸へは、教祖が天の岩戸の得難えがたい神水を第一番にそそぎ込まれたので、今でも此の神水は淙々そうそうとして清く湧いてるげに、神霊の豊かなる、神業の深刻さが思いやらるるのである。元屋敷の角蔵の内井戸というのは、現在の石の御宮が建ててあるところにあった。源之助の内井戸と云うのは、大本境内総務そうむかくの側の井戸がそれである。当今では三つとも大本の所有となっている。

 の神水汲取りの用も終わって、皆々退さがろうとしていた時、それは丁度ちょうどランプのともされる時刻であった。広間の真中にるされてある此のランプが、風もないのに誰も手を触れもしないのに、どうしたのか不意に落ちたのであった。
『ランプがちた、早く水を持ってい、いや水じゃなかった灰を持って来い』 
 とそれを逸早いちはや見附みつけた信者の一人が叫ぶと、大騒ぎとなり、ようやく大事に至らず消し止めた。ほっと一安心していると、二三分と経たぬ内に風呂場の方で、いかにも不意に驚いた様な金切かなきりごえ
『火事だ火事だ 誰か早く来て下さい』
 とわめこえがし出した。
『それまた火事だ、早く消せ』
 風呂場の方へ行って見ると火焔はまさに天井裏をおかさんとしている所であった。必死となってこれもようやくにして消し止めた。二度も火事が起こるとはどうも不思議でならぬ等と皆がそろそろ不安の色を顔へあらはした。そうこうして暫時しばらく休息していると、今度は一人の役員の背中へまたもランプが不意に落ちて来た。それも大怪我もせずにんだが、こうなると、皆一同震い上がって、一晩の内に三度も火事沙汰ざたのあるのは、よくよく神慮を害しているのかも知れぬと、其夜は一人も帰宅せず謹慎きんしんして神にびる事にした。丁度ちょうど其の夜教祖に激しい神懸りがき起った。
 信者役員達は、教祖の今晩の神懸りは余程はげしい様であるから、普通の神示ではあるまい、屹度きっと破天荒はてんこう神託しんたくが出るかも知れぬ等と、不安と恐怖とにられて行った。やや暫時の間、教祖は神懸りの状態にあったが、次の様な神示が下された。

の御水は三年てば、世界中へまわるから、そうしたら世界が動き出す。そして三年経てば大本へは段々役に立つ因縁ある身魂が集まって来るぞ』

 うした神の示しは、はたたして其の事のあって以来、三年目にあの日露戦争が開始された。そして大本へは段々役に立つ身魂が集まって来た。


(※1)
大本神諭「明治34年旧3月7日」
 元伊勢のうぶだらひと産釜の水晶の御水は、昔からそばへも行かれん尊い清き産水でありたなれど、今度の世の立(建)替に就いて、綾部の大本から因縁のある霊魂に、大望たいもうな御用をさして、夜を立直すには、昔の元の水晶に変らん水を汲りに遣らしてあるぞよ。艮の金神の指図でないと、この水は滅多に汲りには行けんのであるぞよ。この神が許可を出したら、何処からも指一本触へる者もないぞよ。今度の元伊勢の御用は、世界を一つに致す経綸の御用であるぞよ。もう一度出雲へ行て下されたら、出雲の御用を出来さして、天も地も世界を平均ならすぞよ。この御用を済して下さらんと、今度の大望な御用は分明わかりかけが致さんぞよ。解りかけたらば速いぞよ。





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プロフィール

真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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