第九章「内部の暗闘」 留守中の出来事

○第九章 内部の暗闘

△留守中の出来事

 教祖が、かくごと艱難かんなんめて、冠島をしま沓島めしまへ留守中に、京都側の信者連中は、そろそろ利害関係から喧嘩口論を始め出して来た。また一方綾部方面でも、不純分子の信者達が、いわれもない論難攻撃を始めて反対運動をさえ開始する様になった。又園部そのべ方面を見れば、信者同志がしきりと反目して、各所に動乱がひきおこされて居た。それにかてて加えて最も深い信者の一人であったなにがしが、早くも諸国を巡回して、大本教は頭から邪教迷信なりと反抗的気勢をげている。全くの当時は四面しめん楚歌そか四分五裂の状態であった。反抗、煽動、暴行は到る所で演出された。教主〔出口王仁三郎〕は其の間にあって屡々しばしば危機に遭遇した。こうした渾沌こんとん期にあっても、ひとり教祖〔出口直子〕は狼狽ろうばいする所もなく、泰然たいぜん自若じじゃくとして、神業のみに余念もなく、悪口雑言、傍若ぼうじゃく無人むじんやからを相手にせず、依然として神の道に精進されていた。

 丁度こうした争闘の絶え間の無い年も過ぎて、翌年の夏の頃であったが、教主は義弟の病気危篤きとくと云う電報を受け取ったのであった。教主は義理ある兄弟の仲であるから、早速さっそく教祖の許可を受けて急いで自分の郷里穴太あなふとへ帰られた。そして一心不乱に義弟の病床で神に平癒を祈禱きとうしつつ、滞在三日にして一先ひとまず綾部に立ち戻るべき穴太を出た。
 教祖のもとへ帰って見ると、自分の荷物が全部荒縄で結びつけられて、門口かどぐちへ放り出されてあるので、これは一体如何どうしたものかと、不審に思いながら、丁度其処そこ来合きあわしていた役員を呼んでわけを聞いて見ると、彼は何か図星ずぼしでも指されたかの様な狼狽えた顔をして、何もはずぐコソコソと奥の間の方へ逃げて仕舞った。教主は愈々いよいよこれは不安と見て取ったので、今度は再び他の役員を呼んで尋ねて見た。
『誰がこんな事をしたのか、誰の内意をうけて私の荷物を勝手に荷造などしたのだ』
 と詰問きつもんすると、其の役員はさも当惑そうに、理由わけを語らぬ譯にも行かないので、気まりわるに話し出した。
『実はあなたの留守中をさいわいにして、役員会議を開きましてな、あんな教主の様なわけの分らぬ先生を、我々のかしらに頂いて、これから仕事をするのは、はなはだ面白くないから、一日も早く追い出して仕舞しまうという事に実は本日協議一決して、荷物全部まとめてあなたの郷里の方へ送り返えそうとした所であったのです。そして皆のものはあなたの鋭敏えいびんな眼識を恐れて、一日も早く荷物を先に送って、の断りには役員総代として誰か一人をつかわすことまで定めていたのでしたが、あなたが一日早く今日御帰おかえりになったので、まっためんくらって仕舞った始末です』
 とベラベラと一切の事を教主にしゃべって仕舞った。教主は一時は立腹して見たものの、なおも事情をたださねばならぬことがあった。
『この事は教祖は御存じあるのか』
 と尋ねて見ると、
『いやじつはあなたを郷里の方へ帰へして仕舞った後で、わしく教祖へ申し上げる心算つもりです。この事を初めから教祖へ申し上げようものなら、てんで教祖が御取り上げくださらぬ事は必定ひつじょうで御座います。とにかくあなたの様な先生を、一日も此処ここに置く事は不賛成だから、善は急げという所から、昨日から皆り寄り集合して居た始末です』

 教主は『何と云う不都合きわやからであるか、油断も隙もあったものではない』…と憤慨ふんがいされた。また一方では教主排斥はいせきの急先鋒でもある某は、自分の陰謀が露見ろけんしたので、んとか善後策をこうぜねばならぬと思いつき、早速同志の一人の所へ行っての日の出来事を報告した。彼等は陰謀露見を驚愕きょうがくし始めた。自分達の罪を棚に上げて、教主へ今のうち謝罪せねば、後で、どんな復讐が来るかも判らぬと心配し出して、到頭たかの四方平蔵のもとへ駆けつけて、何んとか教主へ御詫びをしてれる様にと嘆願したのであった。四方も一時閉口へいこうして思案にくれたが、このまま放任して置くわけにも行かないので、渋々しぶしぶながら納得して教主へ謝罪する事となった。こうして両者の間は一時おさまったものの、時機さえ到来せば教主を追い出す工夫はめぐらしていた。この教主排斥運動の裏面には、例の金光教会側の煽動せんどうがあったので、彼等の中には、金光教の守護神がいて教主を排斥するのだなどと言い触らすものさえあった。


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プロフィール

真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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