第二章「教祖神懸りの発端」 不可思議の瑞徴

△不可思議の瑞徴

 以来、刀自とじの心理は幾度いくたびかか夢幻境むげんきょうさまよふてゐる内に、一日俄然がぜんとして刀自の総身に激しい震動をおこし、神霊せまって心の耳は甘露かんろに洗はるるがごとく、闇寂げうせきうちに心願透達とうたつするが如く、の神気に満ちた兆侯が現はれた。其時刀自とじ自身にもの不可思議な瑞徴ずいちょうについては、いろいろと疑って見たり、またんだが得体えたいの知れぬ怖ろしいものの如く感じて見たり、の不意に前後を忘却させた程強い衝動的な誘惑に駆られたときはうしても胸を静めてっとしてられなかった。翌日もまた同じ様な現象に遭遇したので、刀自はこころひそかにたづねて見た。元旦の夜の出来事と云い、それ以来自分の心に動顛どうてんさせた奇體きたいな影がたいしてゐた色々の物が、はたして、れが心霊しんれい融合の境にかれたと云うのか、それとも狐狸こりの類の悪戯いたづらかと、今まであったすべての事がみな嘘だった様な気もしたり、けれども心が少し静まると、っとして居られない程に不可解な崇嚴そうごんな感情に、今までイライラしてた不調和な騒乱も、何もかもゆるやかに消え去って行くかの様にも思はれた。人霊の憑依ひょういとしては余りに信じられない。かかる一種の幻惑にあらざるたたりのものであるとすれば、一層いっそのことものうてんものと、心をきつとさだめて體裏たいりの或物に打ち向ひ、凛々りりしく身構えを正して
『おんは何物でありますよな、ことこまかに名告なのって下されよ』
 ととひかけた時に、んとも形容しがたい一種の霊気がひしひしとせまって来た。溜息を吐く間もなく、家中の空気を動揺ゆるかさせ、静まって居たちりも一杯に飛びひろがるかと思はる内に、下腹の底から胸のへんにかけてブルブルと震え、呼吸の根も止まるかと思はる程に強くき立てられ、くちびるへんがピリピリと自然に動き出した(※1)。我ともらず、っとつとめて心の中を静かにしてゐると、何處どこからともなく非常に調和の良い微妙な音聲おんせいが響いて来た。

『我こそはうしとらこんじん、元のくにとこたちみことである。今よりなんじ身體からだを守るぞよ』

 いともあざやかに耳に響いた。刀自はづ自分の耳を疑って見た。なお不安と不審さとにえかね、更にたたみかけて、そろそろと詰問きつもんしたり、ののったりあるいは揶揄からかったり、或は哀願もして見たり、根限こんかぎりの口数をついやして憑依した物の正体を見極めんとしたのであったが、それはいづれも徒労とろうに過ぎなかった。身は正しく神境しんきょうに置かれ、心裡しんりには既に神の眞體しんたいが寄りかかって居たらしかった。くさぐさの神示しんじは口を突いて自然に出て、かかれる神は正しく、心も身も躍らす偉大な正神せいしんであることはぼ推定するにかたくなかった。これぞじつに刀自がかみがかりの状態に這入はいった発端ほったんである。


(※1)
○「人神」 月鏡(昭5/2)
 顔面がビクビクと動く事がある。あれは人神と称する霊の作用であって、普通の場合「人神そこ退け灸据ゑる」と三度唱へるとそれで退散するが、善い神様が其人の体内に納まって御用をしようと思って来られる場合は中々治まらず、二三週間位もビクビクやって居るが、それがすっかり静まって来ると、其霊の活動が開始せられて来る。開祖様も「額に来られた、唇に来られた」とよく申されたが、私にもそんな事がよくある。



テーマ : 心に響く言葉・メッセージ
ジャンル : 心と身体

プロフィール

真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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