現代天田郡人物史 出口直子刀自

「現代天田郡人物史」 (福知山三丹新報社, 1914)
 近代デジタルライブラリーより引用。句読点は当方の独自判断にて追加した。

☆皇道大本 出口直子刀自 天田郡福知山出身

 何鹿郡綾部町字本宮に皇道大本教と称する神道の布教所あり。現在数百の牧師と数万の信徒を有し、非公認ながらも公認教を凌ぐの慨あらしめ名声赫々たる其開祖が、我天田郡福知山町出身の出口直子刀自となす。刀自は天保七年十二月十六日福知山上紺屋町医師中川淳一郎邸が未だ同氏の有に帰せざる以前は、同藩士桐村五郎三郎氏住居し其長女として誕生されしが、年二十歳の時綾部本宮なる出口政五郎大工に嫁し一家睦敷三男五女を挙げたるが、政五郎氏は建築術の達人なれども却々の大酒家にして自分の給料は勿論祖先伝来の田畑まで全部売却して飲み盡し、果ては赤貧洗ふが如き困難の中に病の床に就きたれど刀自の苦心は一方ならず、子供の世話から夫の看病三ヶ年の長月日を一日の如く一手に引受け、毎日小餅売を業として僅かの利益で一家を支へたる貞操は地方婦人の模範なりと謳歌せられたり。政五郎は刀自の手厚き介抱に感涙にむせびつつ、五十二歳と一期として逝去せられたれば、愈一家の大責任は刀自の双肩に掛りたり。されば何事も天命と諦めて健気にも金龍餅を製造し、傍ら小商を営みて星を戴て家を出で月を踏んで家に帰へり、一刻の間も安楽と云ふ事もなくして八人の子供を養育せられたるが、其亦子供に縁薄くして人となるや上へから上へから家出をする、行方不明となる、三女四女二名は相續いで発狂する、其れは其れは實に踏んだり蹴たりにて二十余年間と云ふものは如何に艱難辛苦を積まれたるが聞も涙、語るも涙の種ならざるはなく、到底筆紙の及ぶ處にあらず。
 然るに刀自は泰然自若として此上は何事も神に祈るの外なしと熱心に天神地祇に祈願されしかば、三女久子の発狂は忽ち全快されたるより天恩の有難に感じ、益々信心の念堅固となりて、明治二十五年正月元旦の夜神夢を感合して遂に教を開くに到りたるものにして、年既に七十九歳の高齢なるにも拘わらず意気尚壮昔を凌ぎ、日に夜倦怠の色もなく同教の為に、否国家社会の為めに同教の真味を傳導せられあるが、同教の斎神は刀自霊夢の中に発見したる艮の金神 国常立の尊を始め天神地祇八百萬神にして、刀自は一番末子の澄子(出口すみ)嬢を以て世子と為し、奇縁によりて帰神鎮魂の二法に奥義を極める上田王仁三郎(出口王仁三郎)氏を養子に迎え、母子心を一にして大本教と命名し、且つ修斎會と称して盛に布教せらるるに到りたる為め、遂には刀自を目して発狂者なり気狂なりと云ふ者さへあるに至り。為に刀自は其筋へ拘引せられたるのみか後ちには自宅内に牢屋を造りて之に打込み自由を束縛せられたるなど、實に其當時刀自の心を偲ぶれば慨嘆悲憤の極にして普通の婦人なれば自暴自棄の擧に出ずべき筈なるに、元来男勝りの気性有する其上へに天地自然の神意を解せることとて

 憂き事は 猶ほ此上に積れかし
   徳を積りし元と思へば

との古歌を了得せば莞爾として毫も意に介せず自然に任せられたるに頓て疑も晴れて自由の身となられたり。之れ即ち天が刀自を試めし給ひし関門して、其晴天の身となるや不思議にも遠国より其徳を慕ひ参詣して教を請ふもの引も切らず、恰も旭日の勢ひにして向上し、却て足下の綾部町民よりか京坂地方に於いて好評を博し、僅か数年にて分院支所等百数十ヶ所の多きに達し、各所とも参詣者頗る多く、現に本廱の如き本殿に続くに石宮、金龍殿等の新築を見、目下丹波雄島雌島の擬嶋工事中にして数町歩に渉る大池沼を開拓し、其池中幾ヶ所となく浮島を造り宮殿を建築する者にて、尚開祖殿、清霊殿等を其周囲に新築するものなるが、工費十万圓を越へ實に綾部町の奇観として将来を重視さる同教。今日の勢を以て発展せんか、数年を出でずして綾部町の体面を一新し、一大福音を興ふべし。吾人は同教必ず十ヶ年以内に於て一大宗教を形造り、参詣者の便を図る為には鉄道院亦本宮駅を特設するに至るを期待す。尚同教は中學校、風俗劇場等をも新築すべく目下設計中なるが、一婦人直子刀自の力にて僅か二十年内外の布教に於いて今日の隆盛をみる。其神徳の然らしむる處とは云へ實に恐入りたる次第にて本郡出身者中第一位の成功者たり。終に臨み、吾人は刀自が幾久しく健在にて益々其基礎を拡大せられんことを希ふものなり。


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真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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