出口王仁三郎氏に物を訊く座談会

☆出口王仁三郎氏に物を訊く座談会 『昭和』昭和8年8月号 於 天恩郷瑞月庵

日印通商断交
記者「今夕は日印通商断交問題と国際経済会議について、御伺い致したいと思いますが、日印通商が断交に決したのですけれど、日本は印度を断念しなければならないでしょうか?」
出口「断念せんでもいい、一時的の現象や、とても長く続くもんじゃない。」
記者「政府当局者は外交的解決に期待しておりますが、どんなもんでしょうか?」
出口「外交的に幾分は、やらんならんけれど、放っといても、いつまでもよう耐えせん。それは印度の方から、通商して来なならなくなって来る。これは英国が、尻を押していると思うなア。」
記者「そういう事からして、印度の独立運動が、起こりはしないでしょうか、印度の農民は日印通商断交によって、二重の大打撃をこうむるといわれております。」
出口「そうやさかい、いつまでも続きやせん。慌てる必要はない、大勢は放っといても行ける。」

西蔵の独立
出口「それから西蔵(チベット)が独立運動をやっているやろ、あれもダライ喇嘛(ダライ・ラマ)の坊主が英国から尻押しをされて、やっているのだ。」

国際経済会議
記者「六月十二日から開かれる国際経済会議は、新聞によりますと、『第一に、働きたくても仕事がない人が、世界で三千万人は下らない。第二には、生産しても、算盤に合わないから、資本が機械や工場の形で眠っている。第三には、商品は買い手がない為に、倉庫の中で欠伸(あくび)をしている。人が空しく坐し、資本が眠り、商品が倉で欠伸をしておれば、国民の所得は減るほかはない。この不況魔を、どうかして追い払わなければならないと云う目的で、国際経済会議が開かれるに至った』…と出ておりますが、こういう事は、この会議でどういう風に、どん辺まで、解決が出来るものでしょうか?」
出口「それは出来ないね、言うべくして、行われない。頭から改良せな駄目や。」
記者「どういう風に改良するのでしょうか?」
出口「各自(めいめい)に覚醒せないかん。みんな、なまくらして、人の物を食ってやろうと、考えている。そういう一般の潮流になっているから、働かなんだら食われん、何なとせないかんと云うことを自覚させないかん。遊んで食うというのが、そもそも間違っている。今の世の中は、遊んで食ってるのが多い。日本国民八千万全部が、上下一致して働けば、毎日一時間で、仕事は無くなる。それでも収入があって立派に食って行ける。今は働く者と働かぬ者がある。」

著述が一番の労働
出口「しかし、労働だけが働く事のように思うが、筆を採って働くもの、新聞やとか、雑誌を出すもの、或いは本を著述する者が、一番の労働や。ワシは一切の労働をして来た。百姓もやれば、車引きにも行ったし、丁稚もすれば、人の雇いにも行ったし、何から何まで、労働という労働はみな、した。その中には雪の降る寒い日や、夏の暑い最中には、随分苦しかったが、晩に戻って来て、風呂に入ると、すっかり癒る。しかし物を考えたり、著述するくらい、頭を疲らすものはない。一晩くらい寝たかて頭が癒らへん。一番の労働は、文筆に親しむものだ。それやから絵描きや小説家が金をなんぼ出しても、書かんと遊んでおったり、芸者に呆けたりして、一冊を拵える。普通やったら、そうせな出来やせん。他の仕事やったら出来る。労働なら、毎日時間を決めて、やるから楽だ。

 それから大臣とか、ああいう役は、並大抵の労働ではないそうだ。ワシはお鯉さんに聞いたが、桂さんが『ワシはもう死ぬ』と言われたほどや。総理大臣したら、寿命が縮まるそうや。面会ばっかりで、新聞読む間もない。それをせなんだら、何とかかんとか、悪く言われるから、とてもでないそうだ。また元老の機嫌やら、貴族院議員の機嫌も取らんならんし、閣僚や、新聞記者も操縦せんならん。そのほか百般の事が各所から出て来る。新聞読む間も無いほど忙しいんだから、頭がグンニャリなる。あのくらい苦しい事はないそうだ。大隈さんが[注:大隈重信」、百二十五まで生きると言ったが、あれは取り消したやろ。総理大臣になったから、取り消さないかん、と云って取り消したのや。責任が重いから、一番苦しいのや。

 皆が一生懸命、仕事をしたら、一日に一時間働いたら、楽に食うて行けるのだ。現在では、八時間労働やとか、六時間労働やとか云うているけれど、そんなに働く人は少ない。八時間、時間を潰しても、働きやせん。八時間のうち、二時間以上休息している。ワシらの若い時は、十四時間も十五時間も働いた。昔はそれで、一年中の百姓の収入を平均すると、家内五人働いて、一日八厘になっている。今でも十銭にはならん。なんぼ働いても、五人家内で、十銭にならん。それやのに、今の百姓は、贅沢な事をやるからいかんのだ。ワシらは、麦と菜っ葉と、米をちょぼっと入れて食っとった。それも、人間の食うようなものは、食っておらなんだ。今の百姓は、俵代は取るし、水が乾いて田が旱魃(ひやけ)したらと云うてまた日当を取る。そういう具合に、今では、大分ぼろいが、それでも一日十銭にならんのやから、しれたもんや。自分らの若い時にはとても酷いもんやった。」

教育が根本
記者「そうすると、各自が覚醒するよりしょうがない訳でございますか?」
出口「みんなが、自覚せないかん。日本の根本経済政策を実行したら、何でもないけれども、それには、頭から治して行かなあかん。それをやったら、金は何ほどでも出来るけれども、今の人間は、冥加という事を、ちょっとも知らんからいかん。月日と土の恩を知れと云うが、それを知らない者ばかりだ。月日と土の御恩を本当に体得するもんでなかったら、経済は立て直らへん。」
記者「各自が自覚して、月日と土の御恩が解って来れば、経済組織は自然に直るでしょうか?」
出口「直っては来るが、教育から変えてしまわなければいかん。教育が根本問題や。教育さえ良けりゃ、政治も自然(ひとりで)に直って来る。人心が変わって来れば、政治はまるで玩具みたようなもんや。人心が悪いから善い政治を実行しても、効果が上がって来ない。誰が出たかてあかん。根本問題は、矢張り、天地の御恩を知るのが一番だ。天地の冥加を知らなんだら、善い政治は出来やせん。」

経済封鎖
記者「国際経済会議を素人の考えで──人間的に考えますと、日本いじめのように思いますが……」
出口「日本いじめやが、日本は困りゃせん。しかし、一遍困らして貰う方がいい。物が多過ぎて贅沢になり過ぎているから。しかし経済封鎖になって、着物や何も来んようになっても、今までのものでつぎしても、どないしてでも二十年やそこらはやって行ける。だが向こうが、とても、そんなに耐える気遣いはない。不景気やとか、何とか云うけれども、毎年稲が一杯に出来る。三百六十五日を米と粟とで、生命をつないでおったらいいのや。だが上流社会や、大きな商人が困るが、細民(さいみん)にはかえってよい。皆がそうなって来たら愚痴は言わん。二十年ぐらい綿布一つ、毛布一つ来んかって困らへん。いっそ二十年くらい経済封鎖してくれて、何にも来ない方がワシやよいと思う。」
記者「経済封鎖は結局あるんでしょうか?」
出口「あってもこたへん。大きな商人が、銭儲けが出来んくらいで、我々はちょっとも困らない。日本は自給自足が出来る。外国には、ちょっとも世話にならんでも立派に行ける。あの広い満州国と手を握っているんやから、生命をつなぐだけのものは、なんぼでもあるんやから。」

記者「国際経済会議が導火線となって、世界と戦うような問題は起こらないでしょうか?」
出口「いずれ、どうなるか分からんが、戦う事は決まっている。重爆撃機、軽爆撃機と云うものを、どこやかって、何のために造っているのや? 国民は不景気で苦しんでいるが、それがあるために、互いに猜疑心を持って、造っているではないか?  兎に角、結果は日清日露戦争でも、つまり国家経済の戦争になっている。凡てが生活問題からや。みなそうや。経済問題がなかったら、戦争は起こっておらん。普通人同志でも、矢張り金からや。飲食店なんかによく、
 ”貸して不仲となるよりも、いつもニコニコ笑う現金”
   ……という事が書いてあるやろ。あいつと同じ事や。」
記者「決裂になったとすれば──新聞では、それから世界の大戦になる、と云うておりますが……」
出口「国際連盟みたいなもんじゃ。あれでも何でもなかった。それでまたやって来だしたのや。何なと云うて、日本を困らそうとしているのだ。日本は経済封鎖されても、天産自給が出来るんやから、足らなんだら、満州国でやったらいいんや。日本はまだなんぼでも、拓く余地がある。北海道なんか、二割より拓けておらん。あと八分は遊んでいる。昔は政府が山を拓け、と云うて金をくれたが、金を貰うておいて、木だけ売って、後は放かしてしまう。それで今ではなかなか、政府が金をくれんのや、なんせそういう日本人ばっかりやからな。」

本位貨幣
記者「土地本位になりますと、金はなくなるでしょうか?」
出口「通用する為に、札がある。つまり古事記の上から云うと、仲哀天皇の御代に、神功皇后が三韓征伐を先にしようか、熊襲を先に討とうか、と云う事があった。その時の御神勅に『西方に国あり、これを先ず先にせよ、そうすれば熊襲の如きは戦わずして、従う』と云う御神勅があった。その時日本はまだ金銀為本でなかった。しかし西方の国は金銀為本の国である。吾今帰賜其国(われいまよせたまうそのくにに)と云うのは、経綸すると云う事である。その国は金銀で治まらないから、日本の通りに、土地本位にすると云う、御言葉であった。しかし、その後にだんだんと外国の事を真似して、金銭が出来るようになった。これを使ってみると、非常に便利がいい、金銭を持っておったら豊年の時には米がウンと買える、そういうような具合で、よその国へ旅行するにはそれを持って行った。旅行するのには、食料なんか持って行けないから、その為に金を拵えた。それがとうとう、金本位になってしまった。日本も外国のようになったが、外国は上に立つ大統領が人間やから、そんな人間を信用する訳には行かないから、金と云うようなものをやったのだ。金なんか飾り物くらいにしかならず、腹が減っても食えるものではない。」

日本は外国と違う
出口「日本には、金より尊い皇室の御稜威というものがある。御稜威によって、札をなんぼ出されても、国民は喜んでこれを使う。外国では、そういう事は出来んが、日本は出来る。これは神勅だから、どうしてもそうなる。普天の下(もと)、率土の浜(ひん)は、みな皇室のもんや。御神勅によって、皇室のものに決まっておる。皇室は、これを継承されておられるのだから、一旦これを全部皇室にお還しするのや。土地本位になるのやから、土地を奉還する。その土地が一千二百億円のものやったら、それだけの財産が皇室のものになる。皇室からは一千二百億円の札をお下げになるから、国民にそれだけの金が廻って来る。土地本位やから、国民がその土地を借りるのや。ワシは昔から、そう云っている。
 今でも、土地を国民が勝手に自分のもんやと思っているが、これはみな皇室のもんや。皇室のもんやから税金を払っているのだ。それやから、そういう方法にしたら、日本の中がうまく出来る。外国は金銀為本で困っているから、日本の札を用いたらいい。嫌なら、物々交換したらいいのや。それで内地だけに札を通用さして、よその国とは物々交換をしたらよい。世界には日本の札なら、どこでも通用するようになる。そうすれば外国の経済までが救われて来るのだ。」
記者「不換紙幣を発行して、兌換(だかん)するのですか?」
出口「兌換はしてやらない。皇室に奉還するのやから、兌換とか不換という観念がなくなる。応挙(円山応挙)が書いた絵でも、何万円の金の代わりに通用しているではないか。絵描きの描いたものでも、それだけの値打ちがあるんやから、これが皇室から出たものなら、どんなに尊いものか分からん。そうやから金持ちは一万円の札を額にして掛けておいたらよい、いつでもまた、使うというたら使えるんやから。外国では、そういう事は出来ん。日本は皇室の無限の御稜威があるから、出来るのだ、金銀には、限りがあるから駄目や。」

国教樹立
記者「そうなりますと、官吏や何かは、雇人という事になるのですか?」
出口「雇人やない。皇室が御本家やから、我々は家族や。そうすれば、何も要らへん。煙草税も酒税も、取らないでもよい。用があったら汽車に乗ったらよい。一家族の制度になるんやが、タダで乗せるようになって来たら、またしょうがないから、安くしてくれるのだ、そう無茶苦茶に乗ったりする事は出来ん。それから自治体が出来て、働かん者には制裁を加える。また日本の国教というものが出来て、今までの宗教は自然に消滅する。国教を奉じない者は、何にも使わない事になる。国同の安達さんが、政府が金をやって買い上げると云っている。ワシの言う事と、ちょっと違うが、そこまで分かって来た。そうなったら国民は鼓腹撃壌(こふくげきじょう)や。働かな居れんようになる。金があると云うて、遊んだりする事は出来ん。そのためには教えが必要や。天地の冥加を知ったら、一人でに動かんならんようになって来る。法律でせんでも、根本問題はそうしたところにあるから、それまでに国民の教育をしっかりやらねばならぬ。」

価格の変動
記者「札の値段に変動はないでしょうか?」
出口「それはない。国内だけで、外の影響を受けやせんから。」
記者「一人で沢山貯蓄するようにならないでしょうか?」
出口「自分が使うだけより、ためやせん。そして矢張り、身分相応にせんならん。誰も彼も同じという訳には行かない。百姓が要りもせん余計な、家を建てたりする事は出来ん。不必要なものを作ったら、自治体が承知せん。この間、ある代議士が来たから、云うてやったら、『出口さんの経済説は、誰のよりも後へ引かん。私は初めて、こういう説を聞きました』と云ってビックリしていた。古事記の上から云っても、言霊学の方から解しても、そうなると云うてやったら、『こういう経済学者は、世界中探してもない』と云って非常に喜んでいた。」
記者「一時的に今しばらく、経済のゴタゴタしているのを押さえるために、統制経済ということが、盛んに云われておりますが、これは実現されましょう? どうでしょうか?」
出口「云うているけれども、実行は出来ん。手も足も出んとこまで、行かな駄目や。」
記者「では、今晩はこれくらいで失礼させて……。どうもいろいろ、有り難うございました。」(終)


テーマ : 心に響く言葉・メッセージ
ジャンル : 心と身体

プロフィール

真善美愛

Author:真善美愛
真善美愛まことと申します。東日本大震災の後、上野公園さんの『神言会-大本教神諭解説』に出会い、ぐちなお開祖・さぶろう聖師を通じてうしとら〔 艮 〕こんじんくにとこたちのみこと様に導かれます。それ以降、天の御先祖様(万軍の主、創造神)のお役に立ちたいと、良心神(個々の魂に宿る天帝の分魂、天照皇大御神)を奉じて活動しています。

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